Case Study
導⼊事例
環境

ドローンを活用したアリモドキゾウムシ不妊虫放飼試験

概 要

法政大学様からのご依頼により、鹿児島県喜界町(喜界島)において、ドローンによるアリモドキゾウムシ不妊虫放飼試験を実施しました。

背景‧課題
  • 深い森や丘陵地帯での作業のため人手による放飼作業が困難
  • 有人機飛行作業にかかる費用が高額
  • 有人機飛行は低空飛行ができないため放飼するアリモドキゾウムシが大量に必要
解決策
  • 空からの放飼作業で変化の激しい地形の影響を受けず業務を遂行
  • ドローンによる放飼作業で飛行にかかる費用を低減
  • 低空での自動飛行運転でピンポイントに放飼作業を実施
導⼊効果
  • 深い森や急な丘陵地帯でも安全、確実に作業を実施
  • 有人機による作業で膨大だった作業費用を圧縮
  • 正確な座標値への放飼作業で使用するアリモドキゾウムシの量を抑制し費用低減

業務概要

【期間】
2021年12月6日(月)~12月9日(木)
【場所】
喜界島(鹿児島県大島郡喜界町)
【目的】
効果的な害虫防除方法を検証するため
【使用機体】
産業用ドローン複数機種
【内容】
① 撮影限界高度の調査
② 不妊虫の自動放飼試験

ドローン活用の背景

鹿児島県喜界島では、特産物であるサツマイモをアリモドキゾウムシが食い荒らす被害に苦慮されていました。アリモドキゾウムシはイモ科に寄生する習性を持ち、サツマイモに寄生すると食い荒らしで大きな被害をもたらす可能性があります。喜界島ではイモ科に属するノアサガオが生息していますが、喜界島のアリモドキゾウムシはノアサガオに寄生して繁殖を繰り返すことがわかっています。

サツマイモのアリモドキゾウムシによる被害をなくすため、放射線により不妊化したアリモドキゾウムシのオスを、有人機で対象地域に放飼する「不妊虫放飼法」を数年にわたり継続し、アリモドキゾウムシの正常な繁殖を妨げ種の絶滅を促します。深い森や丘陵地帯が多い島なので有人機による放飼を行っていましたが、有人機は低く飛ぶことができないため広域に放飼しなければならず大量のアリモドキゾウムシが必要となることと、有人機飛行にかかる費用も高価なので多くの費用を必要としていました。

ドローンで上空から解像度の高い島の写真を撮影し、画像をオルソ化します。オルソ画像からAIにて特定されたノアサガオがある座標値をマッピングし、ドローンが座標値を通過するよう自動運転プログラムを作成します。自動プログラムでドローンを飛行させ不妊虫を放飼します。

業務内容

今年度は、ドローンによる不妊虫の自動放飼を目指すべく、アリモドキゾウムシの宿主であるノアサガオを認識できる撮影高度の調査、および不妊虫の自動放飼試験を行いました。

自動放飼装置については2020年度に法政大学・多摩キャンパス内で放飼試験を行い、放飼精度(放飼量・的中率)の安定性は実証済。今回は生きた虫を使用した初めての試験となり、実際の現場・条件で放飼が可能かどうかが要点でした。

また、本プロジェクトとは別に、喜界町様では独自にドローンによる不妊虫放飼の導入をすでに開始されています。こちらは使用機体や放飼方式の違いによる運用面の課題があり、今回の弊社機体はその懸念を払拭可能か確認するという目的もありました。それゆえに喜界町の皆様にも興味を持っていただけた試験でした。

投下ユニット(大)
投下ユニット(小)
ユニット搭載機体
不妊虫散布時の様子

お客様の声(法政大学様)

鹿児島県喜界島では1994年からサツマイモを食害するアリモドキゾウムシの根絶事業が始まっています。

防除作業は不妊化したアリモドキゾウムシを放飼することで行われていますが、アリモドキゾウムシの移動距離が短いことから、道路脇等では効果があるものの、森林内に点在するノアサガオ類を宿主としたアリモドキゾウムシの防除に時間がかかっています。

そこでここ数年、ドローンを使った防除作業の効率化に取り組んでおり、今年度は昨年度に作製した不妊虫自動放飼装置を用いて、現地喜界島において実際に不妊虫を搭載して放飼試験をおこないました。

使用中の機体の放飼精度より、今回の自動放飼装置の放飼精度が安定しており、また機体も小型化していただいたため、現実的かつ効果的な害虫駆除方法の確立が期待できると評価しています。

今回は、比較的平坦な森林上空からの放飼作業をおこないましたが、今後は空撮データと連動させて、山林地での放飼作業に応用できるよう、研究を進めたいと思います。


弊社では、用途に応じたドローンに搭載する装置の受託開発・装着を行っています。
今後も農業・自然環境分野における、ドローンを活用した害虫駆除・対策を支援してまいります。
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