東京都大島(三原山)で災害対応時の実証実験を行いました

高速船(元町港桟橋)

伊豆大島へは、東京竹橋桟橋から船で移動。海の上を滑るように走る高速船は、私たちを約1時間45分で大島元町港桟橋に運んでくれました。今回は三原山で実験を行うため、大型ドローンを担いで登山をしなくてはなりません。自分にとってこの三原山の86年の噴火は記憶に新しく、溶岩が流れる生々しい映像が今でも鮮明に記憶に残っています。(歳がバレバレですね)実はこの山は約30年周期で噴火するといわれており、すでにいつ噴火が起こっても不思議ではない時期に入っています。期待と不安の中の現地入りです。

今回の参加メンバーは、ドローンによる航空測量のプロITH合同会社のスタッフ4名、地すべりセンサーの製造元である株式会社イー・エム・テクノ1名、弊社JDRONEから2名の計7名です。航空測量チームとは現地で待ち合わせ、こちらは3名で所定の地点に向かいます。大型ドローンをかばうようにしての登山は通常の登山とは違い非常に疲れます。無事に待ち合わせポイントに到着です。さっそく飛行準備を整えていると、自分たちが登ってきた反対側から一台の車がやってきました。あれ、こんなところまで車が…..と思いきや、なんと我が測量チームの車でした。ドローンを担いで運んできたさっきの苦労はいったいなんだったんだろう…。

センサー設置エリアと航空写真測量エリア

裏砂漠

実験の拠点となる三原山の東側(通称裏砂漠)

イー・エム・テクノ社製地すべりセンサー

苦労して運んだJH950 (JDRONE製)

気を取り直して飛行準備を進めます。地すべりセンサの重さは約3Kg。ドローンから落とされても耐えうる耐衝撃性能を持っています。そしてこのセンサーはわずかな地面の振動をも漏らさず検知してSDカードに記録、もし地すべりが起こった場合は無線で緊急信号を発信する機能を持っています。このセンサーはスキー場の雪崩検知で採用された実績があります。1日目の今日は、この装置をそれぞれ二箇所にドローンにて運搬設置する計画です。

JDRONE製JH950は、ペイロードが5Kg離陸総重量は12Kgとパワフルな機体なので、無理なくセンサーを運んでくれるはずです。今回はこの実験の為にペイロードにウィンチとカメラを取り付けてきました。よって、センサーはドローンから「落とす」のではなく、ウィンチで「下ろす」という作業になります。
さて、ドローンのテスト飛行から始めます。問題ないことを確認して、いよいよセンサーの運搬作業です。このウィンチに付属しているアタッチメントが大変よくできていて、荷物をぶら下げている時は荷物をしっかりとホールドしてくれますが、地面に下ろした瞬間にパッと荷物を放してくれるという優れもの、これで準備は万端です。残るはパイロットの操縦次第。さて、うまく設置できるだろうか..。

搭載カメラで地面を確認しながら操縦、お陰さまでしっかり狙った地点に設置することができました。

ドローンによる航空写真測量

測量チームは合流後直ちに作業に入りました。航空写真を撮る機体はInspier2でこれを2機同時運用で測量します。今回はドローンにとっては比較的広範囲な作業となることもあり、したがって様々な課題に向き合うことになります。実は航空測量では、地上に基準となるGCP(Ground Control Point)を設定しなくてはなりません。地上班が測量機器を担いで運び、今回は5箇所にGCPを設定しました。また「雲」は山肌に影を作るのでやっかい者なのですが、時折晴れ間に雲が通過して頭を悩ませます。そして作業を一気にやらないと太陽の動きで影が変化してしまい画像処理に影響を及ぼしてしまいます。このように周囲の光度が変化する環境ではカメラの露出やシャッタースピードの設定は簡単ではなく「コツ」が必要なのですが、自信満々に設定を指示するリーダーの姿は頼もしい限りでした。加えてこの日は風が強かったのですが、Inspier2は危なげなくミッションをこなしてくれました。ここはInspier2の性能の良さが際立ったところです。

この日の測量チーム(ITH)は、実に統制のとれた動きでテキパキと作業をこなしていました。「これがプロの仕事」と実に関心させられた次第、さすがです。

ドローン航空測量チーム(ITH合同会社)

三原山航空測量で3Dモデリングを施した画像(ITH合同会社)

大島町二日目

今日は、昨日ドローンを担いで登山したルートではなく、前日に測量チームが使ったルートで現地に向かいます。このルートは危ないので避けたほうがいいという事前情報だったのですが、このコースの安全性は、昨日測量チームが証明してくれているので、同チームの後を慎重について行くことにしました。流石に昨日よりハードなコースでしたが無事に現場に到着、このような悪路の場数を踏んでいる測量チームの皆さんは、まさに「ワイルド」、頼りになります。

さて、さっそく準備に取り掛かります。今日は、昨日設置したセンサーをドローンで回収するミッションです。火山の噴火など災害発生時に、人が入れない所にドローンで機材を設置、回収をするという検証になります。センサーの回収は今回最も難しいミッションとなります

昨日は荷物をリリースする為のフックを使いましたが、今日は荷物を回収する為のフックに変更、これでセンサーの取手を引っ掛けることができるかどうかが勝負になります。

今日は、測量チームが回収作業の様子をPHANTOMで撮影してくれる事になりました。イヤでもプレッシャーがかかります。

さて、いよいよ回収作業に取り掛かります。昨日設置した地点の座標が判っているので、センサーの真上まではオートパイロットを使うことができます。

回収用フックに変更

センサー設置地点へ出発

フックを下ろします

フックに成功、引き上げます

センサーの上空15m位の位置からウィンチを使ってフックを下げ、機体を軽く左右に振ってフックを揺らしてセンサーの取手部分を狙います。パイロットは上からの映像を見て操縦しているので、xy座標よりも高さの判断がしにくいのです。微妙な高さの調整はウィンチでするのではなく、プロポのスロットルで「チョン」と打つと10cm、「チョンチョン」と2回打つと20cmというぐあいに機体の動きをスティックの感覚で覚えておくと楽に調整ができると思います。今回も事前にそれを確認しておきました。おかげさまで、2台のセンサー共に無事回収することができました。

ウィンチを巻き上げているところ

この日の風速は4m/s 程で、一定の風速に安定していたので風の影響はあまり気にはなりませんでしたが、環境によってはフックが揺られて難しい作業になるかも知れません。また曳行は、荷物の重さやロープの長さ、そして風の条件などによっては荷物が揺れてしまい、それによって機体が振られることがありますので慎重に操縦しなくてはなりません。揺れを止めようとして余計な操作をすると、かえって揺れを増長することがあるので要注意です。くれぐれも「急」のつく操作をしないように注意をすることが賢明でしょう。今回は開発が間に合いませんでしたが、やはり引き上げた荷物が機体に固定される構造になっていることが理想と言えます。

これで今回のミッションにおける現場作業は終了です。センサーのデータおよび航空写真の解析処理はそれぞれ持ち帰り作業となります。今回の検証は、火山などによる災害が発生した時に、ドローンを使って素早く現地の様子を知る為の行動を想定したものです。現場の地形をマッピングしてしかるべき地点にセンサーを設置し必要なデータを取ること。加えて今回はセンサーの回収までを行いました。

今回参加したメンバー

人が立ち入ることが出来ない災害対応時などにおいては、無人航空機による航空写真技術は極めて有効であること、またドローンを使った運搬作業においてはウィンチの使用が非常に有効であることなどが実証できたと思います。航空写真測量に関して言えば、将来リアルタイムに3Dマッピングができる時代がくることを期待したいところです。ちなみに設置したセンサーの記録では、観測した日において火山性地震などによる揺れは確認されませんでした。参加して下さった皆さま、本当にお疲れ様でした。

今回使用した機材

      JH950

      Inspier2

     PHANTOM 4

東京都大島所属_漁業調査指導船「みやこ」

帰りがけに、波浮港(はぶみなと)に立ち寄りました。あの名曲の舞台となった港はとても情緒豊かなところです。そこで興味深い物を発見、港に停泊してあった東京都所属船の船名が「みやこ」とあり、命名の経緯は定かではありませんが、東京都も粋なことをするものだなと感心しました次第です。恐縮です。